妊娠前、妊娠した瞬間から考えたい「無痛分娩」。もし無痛分娩に反対されたら…夫や義両親との議論のポイントは?
近年、出産方法のひとつとして「無痛分娩」を選ぶママが増えてきています。しかし、日本ではまだあまり浸透していないのが現実。ママが無痛で出産したいと希望していても、夫や義両親との間で賛否両論が分かれるケースも少なくありません。そこで今回は、夫婦や家族などで意見が分かれてしまった場合の議論の進め方のポイントについて考えていきます。
無痛分娩の概要
はじめに、無痛分娩とはどのような出産方法なのかを確認していきましょう。
無痛分娩とは、麻酔を用いて出産時の痛みを和らげる出産方法です。一般的には、背骨から麻酔薬を注射する「硬膜外麻酔」という方法がとられ、これによってお腹から下の痛みが和らぐというもの。全身麻酔とは異なるため、出産時もママは意識があり、産まれた赤ちゃんとすぐに対面もできます。
無痛分娩が日本では浸透していない理由
無痛分娩が日本ではまだあまり浸透していない理由のひとつには、麻酔科の医師の不足が挙げられます。無痛分娩には麻酔を用いるため、麻酔科の医師の配置が必須です。しかし日本では、1施設当たりの分娩数が少なく、無痛分娩を担当する麻酔科の医師を常に配置することが難しいのです。
また、無痛分娩ができる施設の少なさや費用の高さも影響しています。ママが無痛分娩しても、対応している産院が近くになければ難しいでしょう。また、もし見つかったとしても予約が取れないという事情もあるようです。
無痛分娩の場合は通常の分娩とは別に追加の費用が発生することもあり、思ったより出産費用が高額になってしまう場合も。そのため、せっかく無痛分娩ができそうであっても費用を理由に断念せざるを得ないママもいます。
日本には“痛みを経てこそ出産”といった美徳意識や、“無痛分娩は甘えであってずるい”といった考えを持った方が多いのも理由となっています。とくに家族から理解を得られないと、なかなか無痛分娩に踏み切るのは難しいですよね。
出産の痛みに意味はあるの?
じつは、出産の痛みには意味はありません。痛みを乗り越えることで良いママになれるといわれることも多いですが、科学的根拠はありません。自然分娩であっても、帝王切開や無痛分娩であっても、ママや赤ちゃんの在り方に影響はないのです。
無痛分娩は痛みが完全に無くなるわけではない
「無痛」と表されるため誤解を生みやすいのですが、無痛分娩では完全に痛みが無くなるわけではありません。麻酔の効き目は個人差があり、麻酔の投薬量なども産院によってさまざま。無痛分娩でも痛みを感じた、というママの声もあります。そのため、無痛分娩ではなく痛みを和らげるという意味から、「和痛分娩」といわれることもあるんですよ。
出産方法は本来選べないもの
出産では、ママや赤ちゃんの状態に応じて産院を選ぶことが大切です。帝王切開が必要な場合もあれば、NICUが充実している産院を選んだ方が良い場合もあるでしょう。そのうえで、ママがどのように産みたいのかを尊重すべきなのです。
しかし、本来、出産方法は選べないもの。実際は緊急帝王切開になることもあり、その時の身体の状態に最適なスタイルで出産することになります。あくまでもママの意思を叶えられる体制を整えておき、そのときにベストな出産方法が選ばれるというわけです。
無痛分娩に反対された!よくあるお悩み相談
ここでは、無痛分娩に反対されたというお悩みをケース別にまとめました。
義母に反対されるケース
無痛分娩を義母に反対されたというは、無痛分娩のお悩みの中でもっとも多いようです。やはり出産に対して「出産の痛みは女性なら耐えられる」、「薬を使うのは危ない」といった考えを持った方は多くいます。義母世代は無痛分娩がほとんど知られていない時代に出産しているので、無痛分娩に対する知識もあまり深くないようです。
夫に反対されるケース
ママの最も身近な存在である夫から反対されたという声もあります。反対の理由は「みんな痛みに耐えている」、「痛みを乗り越えてこそ赤ちゃんを可愛がることができる」、「リスクがある」など。ママとしては、痛い思いをするのは私なのに…という思いを抱いたというケースも多いようです。
実母に反対されるケース
上記2つに比べると少ないようですが、実母から反対されるケースもあるようです。「1回くらい陣痛をするべき」、「母親になるなら痛みに耐えるのは当たり前」といった厳しめの意見もみられました。ママからすると、実母は母親の先輩としても味方であってほしいのに、このように反対されるとやっぱり自然分娩にするべきか、と新たに悩むきっかけになってしまいますよね。
無痛分娩の議論を進めるポイントは?
意見が対立してしまった場合、議論の際には次のようなポイントを押さえてみてはいかがでしょうか。必ずしもうまくいくとは限りませんが、参考にしてみてくださいね。
無痛分娩について一緒に知る
反対の理由は、ただ知識がなく理解が進んでいないという可能性もあります。世間一般の無痛分娩のイメージやデメリットの先入観によって、メリットの大きさを知らないだけかもしれません。無痛分娩について一緒に調べて知識を得ることで、考えが変わる可能性もあります。もし周りに無痛分娩の経験者がいれば、話を聞いてみることで実際のイメージが湧きやすいかもしれませんね。
また、無痛分娩の出産後に親戚に馬鹿にされるという悲しい経験をされたというママもいます。そんな辛い思いをするママがいなくなるよう、周囲はきちんと無痛分娩の知識を得ておきたいですね。
専門家の知識を借りる
専門家の立場を活用するというのもひとつではないでしょうか。無痛分娩を行っている産院で話を聞くのは一番効果があるかもしれません。数々の分娩を担当してきているプロの意見は、ママの説得よりも効果がありそうです。
伝えずに事後報告にする
最後まで反対され続け、最終的に義母には伝えずに無痛分娩で出産したというママもいます。結果、無事に孫が生まれてきた後の義母は、まるで反対していたことは忘れたかのような反応だったとか。
どうしても議論が平行線で結論が出ない場合は、そのまま無痛分娩で進めるというのもひとつです。ただし、もし何かトラブルがあった場合は避難を受ける可能性があるため、夫が必ずママの味方でいることなど、対策は必要でしょう。
妊娠・出産の意思決定はママの意見が尊重されるべき
無痛分娩に限らず、NIPTも同様に反対されるケースは少なくありません。なかには、無痛分娩には反対されるものの、NIPTはすすめてくる義母もいるようです。無痛分娩もNIPTも、ママや赤ちゃんの命、将来に関係することなのに、ちょっと矛盾を感じてしまう方もいるでしょう。
先にも述べたように、妊娠・出産に関する選択はあくまでもママの意思が尊重されるべきです。無痛分娩、NIPTどちらも正しい知識を持って選択を行うことが大前提。そのうえで、家族の理解が得られるように議論を進めたいですね。
無痛分娩もNIPTも正しい知識を持ちママの選択の後押しを
無痛分娩の普及率は、日本ではまだまだ低い段階です。一方で海外には、無痛分娩費用がすべて社会保障で高い普及率の国もあるんだとか。日本はNIPTの実施数もまだ少なく、無痛分娩と同じく普及段階。そして、どちらにも共通するのが、正しい知識が広まっていないということです。無痛分娩、NIPTのどちらも、ママが希望する場合は家族にも十分に理解してもらい、ママの選択を後押ししてもらえると良いですね。