妊娠超初期・初期に気づかずお酒を飲んでしまった…!赤ちゃんへの影響は?
「妊娠中の飲酒はNG」ということは一般にも広く知られています。しかし、妊娠中の飲酒が、どのような影響をおよぼすのかを詳しく知っている人は少ないかもしれません。また中には、妊娠中の飲酒がNGだと知っていても、妊娠したことに気づかず飲酒をしてしまい不安に駆られる人もいるようです。そこで今回は、妊娠中の飲酒がおよぼす影響や妊娠初期に飲酒した場合の対処法などをご紹介します。
妊娠中の飲酒が胎児におよぼす影響は?
大前提として、アルコールは胎児に悪い影響をおよぼすことが医学的に証明されているため、「妊娠中の飲酒はNG」です。妊娠中にお酒を飲むと、胎盤を通じてアルコールが胎児の体にも運ばれます。そして胎児に運ばれたアルコールは、胎児自身の肝臓で代謝することになるのです。
しかし当然のことながら、胎児の肝臓の機能は未熟。アルコールをうまく処理できないことが原因で、胎児に悪い影響をおよぼしてしまうのです。
その悪い影響はさまざまな症状となって現れることから、「胎児性アルコール症候群(FAS:Fetal Alcohol Syndrome)」と呼ばれています。では胎児への影響を、妊娠中に起こるものと生まれつきの病気をもたらす先天異常の2つに分けて紹介しましょう。
胎児の発育の遅れ・成長障害
妊娠中の飲酒により、胎児の発育の遅れや成長障害、つまり胎児発育不全が引き起こされる場合があります。過去の調査では、妊娠初期※に大量飲酒した妊婦から生まれた赤ちゃんは、体重や頭囲が明らかに小さい、という結果も報告されています。また妊娠中に大量にお酒を飲むことにより、流産や死産につながる恐れもあるため注意が必要です。
※妊娠初期…妊娠1ヶ月(0~3週)、妊娠2ヶ月(4~7週)、妊娠3ヶ月(8~11週)、妊娠4ヶ月(12~15週)の時期
生まれつきの病気(先天異常)
先天異常として、代表的な症状は以下のとおりです。
・出生後の発育障害
・中枢神経障害(小児期の多動、協調運動障害、知能障害、注意力不良など)
・特徴的な顔面の形成不全(小さな目、薄い唇、平坦な顔面など)
・心奇形、関節異常、口唇、口蓋裂などのさまざまな奇形
これらはアルコールによる中枢神経系の障害によるもので、赤ちゃんが生まれたあとの生活にもさまざまな影響があります。
どのくらいなら飲んでも大丈夫?飲酒量との関係は?
胎児性アルコール症候群の発症するメカニズムは解明されつつあります。しかし、「これ以下の飲酒量であれば胎児に影響がない」という安全な量はまだわかっていないのが現状です。
日本産婦人科医会 先天異常委員会委員 左合 治彦先生によると、妊娠中の1日アルコール摂取量と胎児への影響は以下のように発表されています。
15ml未満…胎児への影響は少ない
90ml以上…奇形の発生が明らかに高くなる
120ml以上…胎児アルコール症候群発生率30~50%
また、各種アルコール飲料について「胎児への影響は少ない」とされる1日アルコール摂取量15mlに換算した量も示されています。
ワイン…グラス1杯
日本酒…コップ1/2杯
ビール…350ml缶1本
ただし、胎児が胎児性アルコール症候群を発症していた母親の多くは、飲酒を毎日多量にしていたわけではなく、60~90mlをときどき飲んでいたそう。つまり、胎児への影響は1日の飲酒量だけでは判断できず、飲酒パターンが関係していると考えられています。
引用元 :日本産婦人科医会・先天異常委員会委員 国立成育医療センター 周産期診療部 胎児診療科 左合 治彦「飲酒、喫煙と先天異常」
妊娠気づかず飲酒してしまった…!今できることとは?
今できることは「出産が終わるまで、アルコールを摂取しないこと」ことです。
前述のとおり、安全なアルコール摂取量は正確にはわかっておらず、少ない量でも胎児に影響をおよぼす可能性があるため、妊娠に気づいたら禁酒しましょう。
ただし、中には妊娠初期の飲酒はNGと知っていても、「妊娠超初期に気づかずお酒を飲んでしまった」「検査で陽性判定が出た数日前に飲酒していた」といったケースもあるでしょう。
そもそも妊娠超初期 とは、正式な医学用語ではないものの、妊娠0週(妊娠前の最後の生理の初日)から妊娠3週ごろまでを指します。妊娠検査薬でも、陽性判定が出ない時期。そのため、この期間に飲酒をしてしまっていたことについて悩む妊婦さんが多いことも頷けます。
妊娠直前・直後の飲酒であれば、大きな心配はいりませんが、かかりつけの産科医に相談しておくと安心です。
また、飲酒中に性交し、妊娠にいたった場合の影響を心配する人もいます。この場合も、大きな影響はないと考えられますが、不安な場合は主治医に相談しましょう。
妊娠中にどうしてもお酒を飲みたいときは?
妊娠初期の器官形成期のアルコール摂取は、特異顔貌などのさまざまな奇形の原因に。また妊娠中後期では胎児の発育の遅れや中枢神経障害の原因になると考えられています。つまり、妊娠中は全期間を通じて禁酒が必要です。
しかし中には、アルコールを断つことが難しい人もいるでしょう。そこで、妊娠中に飲んでもよい飲料についてご紹介します。
ノンアルコール飲料
ノンアルコール飲料とは、アルコール度数0.00%の飲料のこと。見た目や味わい、香りがお酒に似ているものを指します。実際の商品にも「妊娠中や授乳中に飲用してもアルコールによる影響はありません」と明記されています。
現在 は、ビールテイストだけでなく、梅酒テイスト、カクテルテイスト、ワインテイストなどさまざまなノンアルコール飲料が販売されており、選択肢が広いことも魅力です。ただし、糖分が多量に含まれている場合もあるため、いくらノンアルコールとはいえ摂りすぎには注意しましょう。
米麹から作られた甘酒
甘酒も妊娠中におすすめの飲み物です。ただし、甘酒には米麹から作るアルコール分を含まないものと、酒粕から作るアルコール分を含むものがあるため十分に注意が必要です。購入時に成分表示を見て、米麹由来のものか、アルコールを含んでいないかをしっかり確認しましょう。
ちなみに、米麹の甘酒は、体によいとされる栄養素がたくさん含まれることから妊娠中におすすめの飲み物でもあります。
・甘酒に含まれるオリゴ糖がお腹の調子を整え、便秘を予防する
・甘味が低く、虫歯になりづらい
・糖や脂質などの代謝を助けるビタミンB群が豊富
・生命の維持に欠かせない必須アミノ酸が豊富
・胎児の発育に不可欠な葉酸が豊富 など
このようなうれしい効果が期待できます。妊娠中、お酒の代わりに甘酒を飲んでみるのもよいアイデアです。
【要注意】薬膳系のお酒
お酒に薬草などを漬けた薬膳系のお酒なら、妊娠中でも飲んでOKと思っている人もいるようです。しかしアルコール分を多量に含んでいるため、妊娠中は飲用する前に必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
妊娠に気づいたら禁酒を!心配なら主治医に相談しましょう
妊娠中に摂取したアルコールによって、胎児にさまざまな悪影響をおよぼすことが明らかになっています。また安全なアルコール摂取量はわかっておらず、少量だから大丈夫、大量だからNGというわけではありません。そのため、大前提として妊娠中は禁酒しましょう。妊娠に気づかずお酒を飲んでしまった場合には、大きな心配はないものの、不安であれば主治医に相談しておくと安心です。
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