妊娠中に関するコラム

女性が生きていく「基本的権利」リプロダクティブヘルス/ライツについて知りたい!NIPTとの関係は?

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「リプロダクティブヘルス/ライツ」という言葉をご存じでしょうか。女性の人権として大切な概念のひとつで、30年ほど前に登場した言葉です。性や出産に関する大切な事柄でありながら、あまり浸透していないのが現状であり、課題ともされています。ここでは、「リプロダクティブヘルス/ライツ」とはどのようなものなのか詳しくご紹介していきます。

リプロダクティブヘルスとは?

「リプロダクティブヘルス」は、「リプロダクティブヘルス/ライツ(Reproductive Health and Rights)」と併記して、「性と生殖に関する健康と権利」と訳されます。1994年にエジプト・カイロで開かれた国際人口開発会議で提唱された概念です。

女性の生涯を通じて、性と生殖に関する健康や生命の安全を権利として捉えるもので、女性の人権の重要なひとつとされています。

日本では、内閣府の男女共同参画においても基本方針として明記されており、看護の現場などでは基本知識とされているんですよ。

リプロダクティブヘルスの考え方

リプロダクティブヘルスは、性や出産に関するすべての事柄において心身ともに本人の意思が尊重され、自分らしい生き方ができることを指します。つまり、女性は“私の身体は私のもの”として考えられるということです。

リプロダクティブライツとの違い

リプロダクティブヘルスは生き方の概念を指すのに対し、リプロダクティブライツは権利を指します。自分の身体に関する事柄を自分自身で選び、決められる権利です。女性の“子どもを産む、生まない、の自己決定”の権利であるともいえます。

リプロダクティブヘルス/ライツが唱えられている背景

リプロダクティブヘルス/ライツという考え方や権利が提唱されはじめた背景には、次のような社会状況があります。

女性の社会進出とともに増えている共働き

日本では、戦後から少子化対策に関して「産めよ、増やせよ」と妊娠・出産が求められていました。しかし、女性の社会進出に伴い共働きが増えてきた現代。妊娠・出産を推奨するのではなく、新たな施策が必要とされています。

男女共同参画社会が実現できていない現状

1999年に施行された男女共同参画社会基本法。しかし、この法律で掲げられた理念は、20年以上経った今でも十分な実現には至っていません。日本の大きな課題でもある少子化対策を考えるうえでも、女性のリプロダクティブヘルス/ライツは重要です。

リプロダクティブヘルス/ライツを社会が深く認識・尊重したうえで、女性が希望すれば安心して子どもを出産できる。そして妊娠・出産を経ても仕事を継続できるような施策と法整備が求められています。

妊娠に伴う自己決定権

現代では、性に関する理解不足や避妊に関する知識・情報不足によって望まない妊娠が問題となっています。しかし、避妊に失敗してしまうケースは一定数いるのが現状です。ここで、新たな観点、リプロダクティブヘルス/ライツが必要とされます。

人は、いつ、誰との間で、子どもを持つか持たないかの自己決定権を持っています。もし妊娠が判明したとき、女性にはその妊娠を継続して出産するか、中絶するかを決める自己決定権があるのです。簡単にいえば、産むか産まないかのどちらを選択しても、本人が熟慮したうえで下した判断であれば正しいということになります。

リプロダクティブヘルスとNIPT

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妊娠に伴う女性の身体的負担は大変大きいものです。妊娠した時点で子どもの将来を引き受ける責任も負わなければなりません。ここで、リプロダクティブヘルス/ライツの考え方に基づくと、女性は自分の将来を左右する妊娠に関して知る権利を持っているのです。どのような妊娠であるか、赤ちゃんの状態はどうかといった情報を知り、妊娠の継続と中断を決められるということでもあります。

この権利と行使のために活かしたいのが、NIPT(新型出生前診断)です。出生前に赤ちゃんの状態を知れる検査とその結果は、女性の人生に関わる判断材料として大きな存在価値といえるでしょう。

リプロダクティブヘルス/ライツに関する日本の取り組み

数々の課題を抱えている日本では、文部科学省や厚生労働省などが指揮を執り、リプロダクティブヘルス/ライツについてさまざまな取り組みを行っています。

リプロダクティブヘルス/ライツという考え方の浸透

まずは、リプロダクティブヘルス/ライツという観点を知ってもらう活動を進めています。

各専門スタッフへの研修

妊娠や出産を含む、女性の生涯の健康支援に関わる各スタッフへの知識の普及に努めています。保健所、市町村保健センターにおいては、母子保健医療に携わる医師、保健婦、助産婦、看護婦等に対してリプロダクティブヘルス/ライツに関する研修などを充実させています。

性について学ぶ機会の充実

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リプロダクティブヘルス/ライツの考え方では、性に関する正しい知識を持つことが大切です。このため、学校における性教育の充実、教職員への研修会を行っています。学校以外にも、産婦人科医や助産師、看護師や地域社会との連携も図っているのです。

女性の生涯の健康保持・増進対策

女性が生涯を通じて心身ともに健康で過ごせるような対策も行っています。

女性の健康を保つための事業

女性を取り巻く健康問題は多数。妊娠や出産だけでなく、婦人科系疾患や更年期障害など、女性特有の健康問題について気軽に相談できる体制の整備を行っています。また、これらの健康問題や疾患についての調査や研究も進められています。

妊娠・出産に関する健康支援

妊娠~出産までの母子保健サービスの提供や不妊専門相談サービスを推進。また、中絶を選ぶ場合の知識の普及や、女性が主体となって避妊ができるような情報提供も行っています。

成人~高齢期までの健康づくり支援

女性が少しでも長く健康で過ごせるよう、健康教育や相談、健康診査、訪問指導といった保健事業を推進。健康的な食生活や運動習慣の普及にも努めています。

女性の健康を脅かす問題への対策

女性の健康に大きな影響を及ぼす問題の知識を普及し、啓発活動も行っています。

HIV/エイズや性感染症の対策

HIV/エイズや、性感染症に関する正しい知識を普及して予防に努めています。また、患者や感染者に対しても正しく理解した行動を取れるよう、啓発活動も実施。性感染症の検査の推奨、相談や治療体制の充実も図っています。
学校においても、子どもの発達に応じて正しい知識を定着させること、そして適切な行動が取れることを目標に教育を推進しています。

薬物乱用対策

男性・女性に関わらず、薬物乱用は本人の心身をむしばむだけでなく、家庭崩壊や犯罪にも繋がります。妊娠中の母体にとっても悪影響があることが報告されているのです。

子どもたちには、早い地域では小学校の段階から乱用防止教育を実施。中学校、高等学校ではすべての学校において乱用防止教育を行っています。地域においても、広報車での広報や、キャラバンカーを活用した乱用防止教室を開催。取り締まりや乱用者の再乱用防止のための施策も推進しています。

リプロダクティブヘルス/ライツを知って充実した人生計画を

妊娠がわかると、そもそも妊娠を継続して出産するかどうかで悩む方もいると思います。リプロダクティブヘルス/ライツを知ると、少し気持ちが楽になるかもしれません。また、赤ちゃんについて積極的に知ることに対して、後ろめたさを感じる必要がないこともわかるでしょう。

日本ではまだまだ浸透していないリプロダクティブヘルス/ライツですが、女性に認められた権利であり、行使することができるものです。妊娠や出産について悩むことがあれば専門機関などにも相談したうえで、自分の選択や人生に自信を持ってくださいね。

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