妊娠中に関するコラム

染色体異常を見つけるための検査とは?染色体異常の基礎から徹底解説!

不妊治療の末に赤ちゃんを授かったママが次に気になるのは「染色体異常」ではないでしょうか。染色体異常を見つける方法として、「母体血清マーカー検査」や「羊水検査」、近年注目されている「NIPT(新型出生前診断)」などの染色体検査があります。検査の種類が多く、いつどんな検査を受けたらよいのかわからないという方も多いはず。そこで今回は、染色体異常の基本についておさらいするとともに、出生前診断の種類や費用についてもご紹介します。

遺伝子情報が入った「染色体」とは

染色体とは遺伝子情報が入ったDNAを凝縮した構造体のことで、ヒトの細胞すべてに存在しています。ヒトの染色体は全部で46本あり、44本の常染色体と2本の性染色体から構成されています。それぞれ2本1組となっており、そのうち性染色体がXYの組み合わせなら男性、XXなら女性です。22組の常染色体のほとんどに、大きい順で1~22番の番号が振られています。

子供は、母親と父親の染色体1~22番それぞれから1本ずつ染色体を受け継ぎます。そのため、母親と父親両方の特徴が表れるのです。

数や形が変化する「染色体異常」とは?

染色体異常とは、染色体の数や形の変化のことです。染色体が変化することで、先天性の障害を持った赤ちゃんが生まれることも。染色体異常は46本すべての染色体で起こり、正常なカップルであっても発生します。染色体異常が発生した胎児は、形成や発育がスムーズに行われず、妊娠初期段階で流産することがほとんどです。流産を免れて育った赤ちゃんは、妊婦健診で行われる超音波検査や出生前診断で染色体異常と診断されます。

染色体異常には2種類あり、染色体の数が変化する「数的異常」と染色体の構造が変化する「構造異常」です。

染色体の数が変化する「数的異常」

数的異常とは、通常2本で1組の染色体が3本で1組(トリソミー)や4本で1組(テトラソミー)、1本のみ(モノソミー)の場合に起こる異常のことです。中でも多いものとして、21トリソミーや、18トリソミー、13トリソミーがあります。

【21トリソミー(ダウン症)】

21番目の染色体が1本余分にある染色体の数的異常が「21トリソミー」です。先天性疾患としてよく耳にする「ダウン症」にあたります。ダウン症の子供は体と精神の発達がゆっくりです。言葉は少しずつ話せるようになりますが一般の子の約2倍の時間がかかり、大人になっても話すのが苦手な子が多い傾向にあります。ダウン症の赤ちゃんが生まれる確率は約500人に1人と言われ、ママの年齢が上がるほど確率は高くなっています。

【18トリソミー(エドワーズ症候群)】

18番目の染色体が1本余分にある染色体の数的異常が「18トリソミー」です。「エドワーズ症候群」と呼ばれ、せっかく生まれたとしても半数以上の赤ちゃんが1週間以内に亡くなってしまいます。1歳の誕生日が迎えられる赤ちゃんは10%にも満たないのです。18トリソミーの赤ちゃんは命に関わる疾患を持って生まれてくるため、産後すぐに治療ができる病院で分娩する必要があります。エドワーズ症候群の赤ちゃんが生まれる確率は3,500~8,500人に1人で、女の子に多い傾向があるようです。

【13トリソミー(パトウ症候群)】

13番目の染色体が1本余分にある染色体の数的異常が「13トリソミー」です。「パトウ症候群」と呼ばれ、重い合併症を持って生まれてくることから、約80%が新生児のうちに亡くなるとされています。ただし、1年以上生きられる赤ちゃんも10%未満いるようです。産後すぐに治療を始めなければならないので、13トリソミーと診断された場合は、医療設備が整った産院へ行く必要があります。パトウ症候群の赤ちゃんが生まれる割合は5,000~12,000人に1人です。

染色体の構造が変化する「構造異常」

構造異常とは、染色体そのものの構造が特殊な場合や、別の染色体とペアになってしまった場合に起こる異常のことです。染色体の一部分が欠けたり重複したりする場合もあります。構造異常の場合に生じる疾患について疾患は以下の通りです。

・ディジョージ症候群…人によって症状に差があり、ほとんど健康に異常がない人や、症状が深刻な人もいます

・1p36欠失症候群…成長障害や難治性てんかんがあり、特徴的な顔立ちになります

・ウルフ・ヒルシュホーン症候群…知能の発達の遅れや難聴、心臓や脳の異常も見られます

・猫鳴き症候群…子猫のよう泣き声をすることから付けられた病名で、体の成長や知能の発達の遅れがあります

・プラダー・ウィリー症候群…重い運動発達障害と言語障害があり、正確な診断までに数年かかることもあります

・ アンジェルマン症候群…重い知的障害や言語障害があり、特徴的な顔立ちをしています

染色体異常となる原因って何?

通常生まれてくる赤ちゃんは、ママとパパから1本ずつ染色体をもらうことで自分の染色体を形成します。しかし、1本ずつもらうはずのところを2本もらってしまうと、合計3本の染色体となり、トリソミーとなってしまうのです。2本もらってしまう可能性は母親の年齢が上がるほど高くなります。

そういった理由もあり、出生前診断を受ける割合も年齢が上がるにしたがって高まる傾向に。NIPT等の出生前検査に関する専門委員会の「出生前診断のニ-ズに関するアンケート2020」によると、何か1つでも出生前検査を受けたという人の割合は、30代後半で約35%、40歳以上で約60%にのぼります。

また、染色体異常を持つ子供が生まれるリスクが高まる要因は以下の通りです。

・ママの年齢が高い

・家族に染色体異常の人がいる

・先天異常児を出産したことがある

・死産を経験したことがある

・過去に何度か流産したことがある

・ママかパパに染色体異常がある

染色体異常を見つける方法

染色体異常の中には、エドワーズ症候群やパトウ症候群のように命に関わるものもあるため、産後すぐに治療を開始したい場合は事前に染色体異常を見つけておく必要があります。染色体異常を見つける方法に出生前診断があります。

「非確定的検査」を行い、陽性判定が出た場合に「確定的検査」に進むのが一般的です。

リスクが少ない非確定的検査とは

非確定検査はママの血液を調べることで赤ちゃんの染色体異常を見つける検査です。検査精度は100%ではないものの、流産のリスクやママの負担も少ないのがメリット。検査方法によって調べられる時期や内容、費用が異なります。調べたい内容や予算を踏まえて、どの検査方法が自分に合っているのか考えてみましょう。

超音波検査(エコー検査)

超音波検査はママのおなかに機械をあてて、超音波を使用しておなかの赤ちゃんを映像化して診断する検査です。赤ちゃんを映像で見ることで、発育状況や形状をチェックすることができるため、妊婦健診で行われる超音波検査も出生前診断のひとつに分類されます。 さらに精密な超音波検査に「胎児精密超音波検査」があり、通常の超音波検査よりもはっきりした映像で赤ちゃんを観察することが可能です。

・検査可能時期:超音波検査に特定の時期はなく、胎児精密超音波検査も早ければ妊娠6週から可能

・費用:約3~10万円

母体血清マーカー検査

ママの血液中の成分から赤ちゃんの染色体異常を診断する検査で、調べられる内容は21トリソミーと18トリソミー、神経管閉鎖不全症です。検査内容に加えて、ママの年齢や妊娠週数、家族歴などの情報を合わせて染色体異常の確立を計算します。

・検査可能時期:妊娠11~13週

・費用:約3万円

コンバインド検査

コンバインド検査は母体血清マーカー検査と超音波検査を組み合わせて行う検査のことです。超音波検査のみの場合よりも精度が高くなります。超音波検査で赤ちゃんの首の後ろの厚み(NT)を計測し、母体血清マーカー検査の検査結果を踏まえて21トリソミーと18トリソミーの可能性を判断します。

・検査可能時期:妊娠11~13週

・費用:約5万円

NIPT(新型出生前診断)

NIPT(新型出生前診断)とは、ママから採取した血液からおなかの⾚ちゃんの染色体異常を調べる検査のことです。正式名は「Non-invasive prenatal genetic test(無侵襲的出⽣前遺伝学的検査)」と言います。 21トリソミーや、18トリソミー、13トリソミーなど他の非確定的検査に比べて調べられる項目が多いのが特徴。さらに、他の非確定的検査が約80%の検査精度であるのに対して、NIPTは99%と高い検査精度を誇ります。検査費用は非確定検査の中でも高く20万円前後が相場です。

当院プレママクリニックでは、55,000円から検査を受けることが可能。全染色体の検査を行うフルセット検査でも110,000円と相場より安く、検査を受けやすくなっています。

・検査可能時期:妊娠10週以降

・費用:約20万円

赤ちゃんの状態が正確にわかる確定的検査とは

確定的検査は赤ちゃんの染色体異常を正確に診断できる検査です。検査は、絨毛を採取して検査する「絨毛検査」と、羊水を採取する「羊水検査」の2種類。おなかに針を刺して赤ちゃん由来の細胞を調べるため、流産や出血、子宮内感染の危険があります。非確定的検査だけでは陽性判定が出ても染色体異常を確定することができないため、赤ちゃんの状態を正確に知りたい場合は確定的検査を行う必要があります。

もしもに備えるための出生前診断

染色体異常の疾患の中には、生まれてすぐに治療を始めなければ命に関わる疾患もあります。出生前診断で赤ちゃんの状態を事前に把握することで、医療体制の整った病院に転院したり、心の準備をしたりすることが可能です。生まれてくる赤ちゃんのためにも、出生前診断を受けるかどうか夫婦で話し合ってみてください。

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