妊娠中に関するコラム

卵子の染色体疾患(染色体異常)とは?赤ちゃんにどんな影響がある?

染色体異常と聞くと、「流産のこと?」「先天性の染色体疾患がある?」などのイメージが先行し、二の足を踏んでしまう方も多いのでは?しかし、卵子の染色体異常は、女性の誰にでも起こり得る症状といわれています。実は毎月の排卵のうち、4回に1回は染色体異常のある卵子であるといわれるほど珍しいことではないのです。そこでこの記事では、卵子の染色体異常のしくみや赤ちゃんにどんな影響があるのかなどをくわしく紹介していきます。

卵子の染色体異常とは?

卵子の染色体異常とは、染色体の数が多いまたは少ない状態や、通常とは違う構造の染色体をもつ症状のことです。

女性は基本的に、毎月1回排卵をしていますが、そのうちの4個に1個の卵子には染色体異常が起こっているといわれています。つまり卵子の染色体異常は、女性の誰にでも可能性がある自然なことなのです。

<染色体異常の割合>

受精卵40%→着床前25%→妊娠後期10%→新生児0.6%

ただし、染色体異常は淘汰されやすいため、受精してから新生児として生まれるまでにその割合は減っていきます。そのため、「自然流産」は、染色体異常が関係していることが多いのです。

卵子の染色体異常に年齢は関係ある?

年齢が上がると、卵子の染色体異常は起こりやすくなります。その理由は、年齢とともに卵子も老化していくためです。

卵子のもととなる「原始卵胞」は、赤ちゃんのときから女性の卵巣の中にあります。成長していく過程で新たに作られることはなく、卵子も同じ分だけ年齢を重ねていきます。

つまり、30歳で排卵した卵子は30年、40歳で排卵した卵子は40年経過した細胞が受精卵となるため年齢によって妊娠のしやすさも変わってくるのです。

また、卵子は年齢を重ねると徐々にエラーを起こすことが増えます。目安としては、35歳を過ぎたあたりからこうした症状がみられやすいでしょう。

卵子の染色体異常の原因とは?

前述のとおり、卵子の染色体異常の原因の1つには、女性の年齢が上がることによる卵子の老化があるといわれています。

では、なぜ年齢を重ねると卵子の質が下がりやすいか、というメカニズムはまだまだ解明されていません。これまでに、ミトコンドリアの機能低下と卵子の老化を関連づける報告もあがっていますが、不明な点も多いとされています。

染色体異常により確率が上がることとは?

染色体の数や構造に異常があると、次のような現象が発生する確率が上がります。

先天性の染色体疾患

染色体異常が起こると、赤ちゃんが先天性の染色体疾患をもって生まれる確率が高くなります。

このうち、染色体の数が多かったり少なかったりすると、ダウン症などの症状をもつ赤ちゃんが生まれます。ダウン症以外では、18番染色体が1本多いエドワーズ症候群や、13番染色体が1本多いパトウ症候群などが代表的です。

また、染色体の構造に異常があると、隠れた染色体異常をもつ赤ちゃんも生まれます。顔つきや身体機能などに顕著な症状はありませんが、将来結婚して子どもを望むときに、不育症の症状などがみられる症状です。

先天性異常があると、こうした先天性の染色体疾患が起こりやすくなります。なお、新型出生前診断(NIPT)は、赤ちゃんの染色体数の異常や微小欠失などを調べることが可能です。

自然流産

染色体異常が起こった受精卵は淘汰されやすいため、自然流産する可能性が高まります。とくに、染色体の数が通常と異なるときは遺伝する情報の量が変わるため、流産する確率が上がるでしょう。

一方、染色体の量に問題がない構造異常の場合は、流産の直接的な原因にならないことが多いといわれています。ただし、一部の染色体が欠けていたり多かったりする構造異常の場合は、遺伝情報の量が変わるため流産リスクが高まるでしょう。

受精卵の染色体異常は、決して珍しくない現象です。また、染色体異常による流産も、防ぐことのできない自然な現象であるといわれています。

染色体異常の検査はある?

卵子の染色体異常は、「夫婦染色体検査」などで調べることができます。

夫婦染色体検査とは、採血によってご夫婦の染色体の数や構造に異常がないか、調べていく検査です。3回以上の流産を繰り返す、習慣流産を経験したご夫婦の約4~5%には、染色体の異常がみつかるといわれています。

妊娠を望むご夫婦にとっては、知っておきたい情報の1つといえますが、たとえ染色体に異常があったとしても治療法はありません。また、染色体の異常はご両親から受け継いでいることがほとんどのため、検査結果次第ではご兄弟姉妹にも影響がおよぶことも考えられます。そのため、検査を受ける前には、結果がもたらす意味をよく考えておくことが大切です。

なお、胎児の染色体異常を調べる検査には、新型出生前診断(NIPT)などの非確定的検査と羊水検査などの確定的検査があります。診断精度の高さでは確定的検査が上回りますが、子宮内に針を刺すなど破水や出血のリスクが懸念されるため、まずはリスクのない非確定的検査を選ぶ方が増えています。

卵子の染色体異常は改善できる?

卵子の染色体異常を正常に戻すことは、残念ながらきわめて難しいといえます。その理由は、卵子は生まれたときからすでに子宮に備わっており、成長の過程で新しく作られないため。年齢にともない、数や質は自然と低下してしまうのです。

また、ご両親から受け継いでいる遺伝の要素も関係しています。そのため、染色体に何か異常があったとしても、根本的な治療ができないことがほとんどです。

卵子の質を下げない方法とは?

卵子の染色体異常に対する根本的な治療は、残念ながらありません。しかし、今ある卵子の質を下げない方法は、いくつか考えられます。卵子をできるだけよい状態を保つには、次の生活習慣や食生活に注意してみましょう。

適切な食事

基本的なことですが、バランスのよい食事を摂ることは大切です。とくに、肉や魚など、たんぱく質の積極的な摂取が推奨されています。また、ビタミンやミネラルが豊富な玄米もおすすめな食品の1つです。味噌や納豆など、消化を助ける発酵食品もできるだけ摂取するとよいでしょう。

体を温める

体が冷え、血流が滞ると、子宮や卵巣の血液循環も悪くなることが指摘されています。そのため、体を温める生活習慣が大切です。体を冷やす食べ物はできるだけ控えたり、シャワーだけでなく浴槽につかったりすると、体も温まりやすいでしょう。

カフェインを摂りすぎない

カフェインが多く含まれるコーヒーや紅茶などは、体を冷やしやすい飲み物の1つです。また、カフェインを摂りすぎると活動性を高める交感神経を刺激し、体の老化を早める活性酸素も多く分泌されます。そのため、卵子をできるだけよい状態に保ちたい方は、できるだけカフェインを控えたほうが賢明でしょう。

適度な運動

軽いウォーキングやストレッチなど、適度な運動は効率的に体温を上げてくれます。そのため、生活の中に上手に取り入れると、冷えの解消などにもつながるでしょう。また、卵子の状態を悪化させる原因には、ストレスも関係しています。そのため、日々の息抜きとして、適度な運動を上手に活用してみましょう。

卵子の染色体異常は誰にでも可能性がある!

卵子の染色体異常は、排卵の4回に1回の割合で起こる、女性であれば誰にでも可能性がある症状です。卵子の染色体異常があった場合には、受精から新生児になるまでに淘汰が起こるため、自然流産も生じやすくなります。3回以上流産が続き、習慣流産と診断されたときには、夫婦染色体検査を提案されることもあるでしょう。

また、染色体異常があると、ダウン症などの先天性の染色体疾患をもつ赤ちゃんが生まれる可能性も高まります。胎児について不安がある方は、新型出生前診断(NIPT)などの検査で調べることが可能です。それぞれのご夫婦の状況に合わせた検査を選んでみてはいかがでしょうか。

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