妊娠中に関するコラム

NIPT(新型出生前診断)でわかる先天性疾患とは?発生する原因に遺伝は関係しているの?

100人の赤ちゃんが生まれたとき、3~5人は何らかの疾患をもちながら生まれてくるといいます。これらの症状は「先天性疾患」と呼ばれており、妊娠中にわかった場合には赤ちゃんに合わせた分娩方法や療育方法を準備することが必要です。とはいえ、先天性疾患とはどのような疾患で、どんな原因によって起こるかはわからないという方も多いのでは?そこでこの記事では、先天性疾患とは何かについてくわしく解説していきます。

先天性疾患とは?

先天性疾患とは、赤ちゃんが生まれながらにもっている疾患のこと。先天性疾患をもって生まれる赤ちゃんの割合は、3~5%といわれています。ひと口に先天性疾患といってもその種類はさまざまで、症状が起こるのも顔つきや体の形、臓器の機能など人それぞれです。また、重症度も一人ひとり違うため、症状に合った治療法が行われています。

先天性疾患が起こる原因は?

先天性疾患が起こる理由については、まだまだ解明されていない部分も多いのが正直なところです。しかし、わかっているものでは、次の4つの原因があげられています。

●染色体の変化によるもの

先天性疾患の約25%は、染色体の変化によると考えられています。染色体とは、細胞の中心である核の中に存在するひも状の組織で、主に「体をつくるための設計図」の働きを担っています。染色体の数は生き物ごとに決まっており、人の染色体の数は46本。しかし、先天性疾患をもつ赤ちゃんの中には染色体の数が多い子や少ない子、染色体の形が変化している子などが見られます。こうした染色体の変化は受精したときに起きるもので、妊娠初期の妊婦さんの行動は影響していません。

●遺伝子の変化によるもの

先天性疾患の約20%は、遺伝子の変化によるものと考えられています。遺伝子とは、両親から赤ちゃんへと受け継がれる遺伝情報「DNA」の中でも、たんぱく質の生成にかかわる情報をもつ物質のこと。こうした遺伝子に何らかの変化があった場合に、先天性疾患が起こると考えられているのです。具体的には、両親から受け継いでいる場合もあれば、赤ちゃんにだけ遺伝子の変化が起きていることもあります。そのため、もし妊娠前に心配なことがあれば、医療機関にて遺伝カウンセリングを受けることが推奨されています。また染色体の変化と同じように、遺伝子の変化も受精時に起こるもののため、妊娠初期の妊婦さんの行動は影響していません。

●さまざまな因子が影響するもの

先天性疾患の原因で約半数を占めているのが、さまざまな要因が影響し合った「多因子遺伝」です。1つの遺伝子の変化ではなくいくつかの遺伝子の変化によって症状が現れるものや、環境要因などと複雑に絡み合い、先天性疾患が起きることがあるのです。高血圧や糖尿病といった生活習慣病や、先天性心疾患などは、こうした多因子遺伝が原因だと考えられています。

●環境や催奇形因子が影響するもの

先天性疾患の約5%は、環境や胎児に何らかの影響を与える催奇形因子によるものと考えられています。具体的には、たばこやアルコール、薬剤などの摂取が要因です。また、胎児がお腹にいるときに、トキソプラズマや風疹などの感染症に感染した際も先天性疾患のリスクが高まります。

NIPT(新型出生前診断)でわかる主な先天性疾患とは?

現在、先天性疾患のいくつかはNIPT(新型出生前診断)によっても可能性の有無を知ることができます。とくに、染色体の変化による先天性疾患は、NIPTで測れる症状が多いです。ここからは、NIPTでわかる主な先天性疾患について見ていきましょう。

●21番「ダウン症候群」

ダウン症候群とは、21番目の染色体が、1本多くつくられることで起こる先天性疾患です。21トリソミーとも呼ばれており、同症候群の赤ちゃんは1,000人に1人の割合で生まれています。特徴は、筋肉の緊張が弱く、全体的な発達がゆっくりであること。また、心臓や消化管との合併症をもつこともあります。一方で、医療機関と連携しながら早いうちから療育を行うと、身体的・知的能力が向上しやすいことがわかっています。そのため、同症候群の症状をもちながらも大学進学や就業される方も多くいらっしゃるのも特徴。また、芸術面に秀でる方もおり、音楽家や書道家として活躍される方もいます。

●18番「エドワーズ症候群」

エドワーズ症候群とは、18番目の染色体が、1本多いことで起こる先天性疾患です。18ト

リソミーとも呼ばれており、10,000人または3,000人に1人の赤ちゃんが同症候群をもって生まれています。エドワーズ症候群の赤ちゃんは、いくつかの合併症をもっていることが多く、胎内で成長が止まってしまうケースも少なくありません。生後1年まで生存できる割合は約10%で、生まれた直後から複数の治療が必要となります。超音波検査で、胎盤が小さいことや胎動が弱い、羊水が多いなどの症状が見られたときに同症候群の疑いが高まります。

●13番「パトウ症候群」

パトウ症候群とは、13番目の染色体が、1本多いことで起こる先天性疾患です。13トリソミーとも呼ばれており、5,000人に1人の赤ちゃんが同症候群を生まれながらにもっています。パトウ症候群の赤ちゃんは、とくに頭部に症状が現れやすく、複数の合併症を伴うケースも少なくありません。これらの合併症に対する根本的な治療はまだ確立されておらず、酸素投与や点滴などで対応することがほとんど。また、生まれた直後から治療が必要となります。体内で成長が止まってしまい流産や自然となるケースも多く、出生後1年以上生存できる割合は10%未満です。重度の症状をもって生まれることが多いため、早めに検査を行い、生後の治療方針を決めておくことが大切です。

染色体異常は遺伝する?~ダウン症候群の場合~

NIPTの検査を行い陽性と診断された場合には、「染色体異常がさらに遺伝するのか」知っておきたいという方も多いのではないでしょうか?ここからは、先天的に起こりやすい染色体異常の中でも発症率の高い、ダウン症候群を例にお伝えしていきます。

●染色体異常の多くは遺伝しない

まず結論からお伝えすると、染色体異常の多くは遺伝しません。先天性という言葉のイメージから「必ず遺伝するもの」と考えられがちですが、実はそれは誤りなのです。赤ちゃんにだけ遺伝子変化が起こり、発症しているケースがほとんどといえます。また、ダウン症候群の発生率は、遺伝よりも母親の加齢に比例して高まりやすいことがわかっています。なお、ダウン症候群の発症原因となる21番目の染色体の大きさは、46本ある染色体内で最小です。そのため、重篤な症状をもって生まれてくることが少ないとされています。

●「転座型ダウン症」は遺伝することも

ほとんどのダウン症候群は遺伝しませんが、ごくまれに遺伝するものがあります。それが「転座型ダウン症」と呼ばれる疾患です。転座型のダウン症候群は、3本ある21番染色体のうち、どれか1本がほかの染色体とくっついています。これが転座と呼ばれる状態で、両親が健康であっても転座をもっていることもあるのです。母親や父親、いずれかが転座をもっている場合は、年齢問わずダウン症候群の赤ちゃんが生まれる確率は高くなります。

赤ちゃんの先天性疾患はいつわかる?

NIPTを使ってわかる先天性疾患は、妊娠10週目0日を過ぎたら検査が可能です。主に染色体の変化が原因となっている「ダウン症候群」「エドワーズ症候群」「パトウ症候群」などは、この時期から可能性の有無がわかります。また、先天性心疾患は、早ければ妊娠20週目ほどで超音波検査にて発見されることもあります。いずれの場合も、早めに知ることができれば、出生前にさまざまな事態に備えることが可能です。

先天性疾患を早めに知ることが備えにつながる

赤ちゃんの中には、生まれながらに何らかの疾患をもつ子もいます。その主な原因は、染色体や遺伝子などによるものと考えられています。一方、ダウン症候群など染色体異常があった場合でも、多くの場合は遺伝しません。また、先天性疾患を早めに知ることで、妊娠中からさまざまな準備を整えることができます。不安がある方は、ぜひNIPTを活用しながら、赤ちゃんを迎える準備を始めましょう。

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