遺伝子欠失とはどのような状態?特徴的な症候群についてご紹介
遺伝子欠失がどのような状態を指しているかご存じでしょうか?今回の記事では、遺伝子や染色体の欠失とは何か、産まれてくる赤ちゃんの遺伝子が欠失するとどのような症状が出るのかなどをまとめていきます。お腹の中にいる段階で遺伝子の欠失があるか調べられる方法についても解説しているので、興味があるママもぜひ参考にしてくださいね。
遺伝子(染色体)が欠失した状態とは?
遺伝子はDNAで構成され、細胞の種類ごとに決まったタンパク質の情報が記録されている領域を指します。遺伝子が格納されているのが染色体です。遺伝子(染色体)の一部が失われた状態を欠失や欠損と呼び、欠失がある遺伝子から作り出されるタンパク質は、上手く機能しない可能性があります。
遺伝子が欠失していると起こり得るいくつかの症候群の総称は、「染色体欠失症候群」です。染色体欠失症候群は先天的に異常があり、知能面・身体面の発達が遅れるケースが見受けられます。根本的な治療法はないものの、対症療法で症状を抑えたり緩和させたりすることが可能です。
遺伝子の欠失によって起こる症候群
ここからは、遺伝子が欠失していることで引き起こされる症候群にはどのようなものがあるかまとめていきます。
22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)
22番目の染色体がわずかに欠失していることで起きる症候群で、4,000~5,000人に1人の割合で発症します。
【主な特徴】
・顔が細長い、眼の間が離れている、口が小さいなど顔の特徴がある
・精神の発達が遅れる
・胸腺の低形成や無形性により、免疫が低下する
・口蓋裂や軟口蓋閉鎖不全により、鼻声のような声になる
・低カルシウム血症が起きやすい
・全体の8割程度が心奇形を合併する。中でも左右の心室の壁に穴が空くなどの特徴があるファロー四徴症の合併が多い
【治療法】
合併症である心疾患については生活指導や手術を行うことになります。
5p欠失症候群(猫鳴き症候群、クリ・デュ・チャット症候群)
5番目の染色体の短腕部分が欠失するもので、15,000~50,000人に1人の割合で起こる症候群です。
【主な特徴】
・精神や運動の発達が遅れる
・小さな頭やあご、丸顔など見た目に特徴がある
・新生児期~乳幼児期に甲高い猫の鳴き声のような泣き声を出す
・筋緊張低下
・2,500g未満の低出生体重児
【治療法】
てんかんや心疾患を併発した場合には、薬物療法などの対症療法が行われます。
アンジェルマン症候群
15番染色体の短腕部分が欠失することで起きる症候群で、15,000人に1人の割合で産まれるとされます。
【主な特徴】
・重度の知的障害(意味のある発語はまれだが、理解は比較的できる)
・ちょっとしたことでもよく笑う
・落ち着きがなく、好奇心旺盛
・乳幼児期に睡眠障害が起きる(夜間の中途覚醒など)
・全体の約8割がてんかんを合併する
【治療法】
抗てんかん薬や睡眠薬の服用などの対症療法が行われます。
プラダー・ウィリー症候群
15番染色体の長腕部分の遺伝子の働きが失われる症候群で、正確な頻度は不明ですが15,000人に1人程度の割合で起きるといわれています。
【主な特徴】
・筋緊張低下が起こりやすく、哺乳障害などになるケースもある
・色素が低下し、金髪などになる場合もある
・外性器の低形成
・3~4歳に過食傾向が認められ、次第に低身長や肥満が目立つようになる
・中度レベルの知的障害
【治療法】
早いうちから栄養管理を行うことが重要とされています。ほかにも低身長が認められる場合には成長ホルモン療法を行い、知的発達に対する支援も必要です。
4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)
50,000人に1人程度に起こる症候群で、4番染色体の短腕部分が欠失した状態です。
【主な特徴】
・額が突き出ている、眉毛が弓状、眼が離れている、まぶたが垂れ下がっているなど顔に特徴がある
・子宮内から始まる成長障害
・精神・運動発達遅滞
・9割以上がけいれんを、6~7割が骨格異常を合併する
【治療法】
起きやすい症状を早期に発見し、抗てんかん薬の使用や外科の受診など、合併症の内容に合った治療が行われます。
1p36欠失症候群
1番染色体の短腕の末端領域の欠失によるもので、患者数は100人ほどとされます。
【主な特徴】
・重度の精神発達遅延や成長障害がある
・難治性のてんかんを発症する
・とがったあごや落ちくぼんだ眼など、見た目に特徴が表れる
・乳児期に筋緊張低下や哺乳障害が起こることがある
・先天性の心疾患や斜視、白内障、難聴などを合併する場合がある
【治療法】
発達の遅れなどに対する早期からの療育や、抗てんかん薬の使用などで症状が緩和されることがあります。
遺伝子の欠失があるかどうかはNIPTで調べられる
遺伝子が欠失している可能性があるかどうかは、赤ちゃんが産まれてからだけではなくお腹の中にいる状態でも知ることができます。その方法の1つがNIPTです。
NIPT(新型出生前診断)とは?
Non-Invasive Prenatal genetic Testing、通称NIPTは、妊娠10週以降であればいつでも受けられるスクリーニング検査です。確定診断はできませんが、染色体に欠失がある可能性が高いかどうかは判断できます。なお当クリニックでは、以下の染色体欠失の可能性を調べることが可能です。
・1p36欠失症候群
・4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)
・5p欠失症候群(クリ・デュ・チャット症候群)
・プラダー・ウィリー症候群
・22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)
NIPTが受けられる施設には認定施設と非認定施設があり、認定施設では35歳以下はNIPTが受けられないので注意してくださいね。
それでは、NIPTのメリット・デメリットを見ていきましょう。
NIPTのメリット
・赤ちゃんが産まれてくる前に染色体に欠失があるかどうか分かることで、不安が軽減される
・染色体の欠失が分かったとしても、準備期間が長いため前向きに受け入れやすい
・採血のみで行う検査のため、お腹に針を刺して行う羊水検査や絨毛検査に比べて母体や胎児への負担が少ない
NIPTのデメリット
・陽性となった場合にメンタル面が不安定になる
・不確定診断のため、偽陰性の可能性もある
・保険適用外なので、費用は全額自己負担
遺伝子の欠失以外にNIPTでわかること
NIPTでは、遺伝子が欠失しているかどうか以外にも分かることがあります。
性別を知ることができる
性別を知る手段といえば、妊婦健診で行うエコーが思い浮かぶと思います。エコーだと14週ごろ性別が確実に分かるとされますが、エコーの映り方によっては性器が隠れ、なかなか判断がつかないことも。
しかしNIPTであれば、10週から検査が行え、ほぼ100%の確率で性別が判断できます。性別を判断する染色体は、男の子ならXY、女の子ならXXです。NIPTによりY染色体が見つかれば男の子、見つからなければ女の子と判断できるのです。
染色体異常の疾患
染色体異常の疾患についても、染色体の欠失と同様に可能性の高低を調べることができます。当クリニックで調べられる代表的な染色体異常の疾患一覧は、以下のとおりです。
・ダウン症(21トリソミー):成長障害や知的障害など
・エドワーズ症候群(18トリソミー):成長障害や心奇形など
・パトウ症候群(13トリソミー):先天性心疾患や知的障害など
・ターナー症候群(モノソミーX):リンパ浮腫、外反肘など
・トリプルX症候群(トリソミーX):曲がった小指、精神障害など
・クラインフェルター症候群(XXY):女性化乳房、不妊症など
・ヤコブ症候群(XYY):学習障害、ADHDなど H2:遺伝子の欠失が気になる場合はNIPTを受けるのもひとつの手
遺伝子の欠失は、さまざまな疾患を引き起こす原因となります。産まれてからではなく、お腹の中にいる段階でその可能性を知っておきたい方は、NIPTを受けることも選択肢に入れてみましょう。
プレママクリニックでは、すべての染色体異常や染色体欠失の可能性の有無を調べられる「フル
セット検査」と、ピンポイントで染色体異常を調べられる「ライト検査」を受けていただけます。興味がある方はぜひ当院のホームページをご覧ください。