エコー写真・妊婦検診で見る「NT」とは何を示すの?先天性疾患との関係から詳しい検査方法まで
「妊婦検診でNTを指摘された」「エコー写真の見方を調べていたら“NT”というものが気になった」といった方はいませんか?NTとはお腹のなかの赤ちゃんの“首の後ろのむくみ”を指すもの。ダウン症候群の可能性につながるとしてプレママたちが気にする項目のひとつになっています。しかし、妊婦検診でNTを指摘されたからといってすべての赤ちゃんに疾患があるわけではないんですよ。ここでは、NTの基本情報から疾患の可能性や詳しい検査方法まで詳しくお伝えしていきます。
NTとは?
NTとは「Nuchal Translucency」の略称で、妊娠初期(11~13週頃)の赤ちゃんの首の後ろのむくみのことを指します。程度の大小はありますが、すべての赤ちゃんに存在するものです。エコー写真でのNTの見方は簡単で、赤ちゃんの頭から胸の部分を縦切りの画像で見てみると、首の後ろに厚みが見られると思います。ここで確認できたものがNTです。NTは妊娠週数が進むとともに厚くなっていきますが、成長とともに薄くなっていくとされています。
「NTがあると疾患の可能性がある」と聞いたことがあるママやパパもいるかもしれません。しかしこれを判断するには、妊婦検診時にたった数分エコーで見るだけでは不十分ともいわれています。少なくとも、NTの内容は確定診断ではないことを覚えておきましょう。
NTが見つかったらどうすればいい?
妊婦検診でNTを指摘されると赤ちゃんの状態が心配になる場合もあるでしょう。しかし、先ほどもお伝えしたとおり、NT=疾患ありと確定されたわけではありません。確かにNTが厚いと疾患の可能性は高くなりますが、NTが認められても無事に産まれた赤ちゃんも多くいます。逆に、NTを指摘されないからといって疾患のリスクがゼロとも言い切れないのです。
そこでまず、NTで可能性のある疾患を知り、今後の対応について考えてみましょう。
NTで可能性のある疾患は?
NTで可能性のある疾患は複数ありますが、よく知られているものでは「ダウン症」(21トリソミー)が挙げられます。また、「エドワーズ症候群」(18トリソミー)、「パトウ症候群」(13トリソミー)も可能性として残されています。いずれも染色体異常によって起こる疾患です。
NTが厚いとダウン症などの確率が上がるというデータは存在しますが、NTが正常値で異常なしといわれていてもダウン症だったという場合もあるのです。そこで、NTで可能性のある疾患を詳しく調べるために、ほかの検査をすすめられる場合があります。
NTを詳しく調べる方法は?
NTを詳しく調べるためには「出生前診断」が用いられ、これには「非確定的検査」と「確定的検査」と呼ばれる2種類の検査があります。
非確定的検査では確定診断は出ませんが、母子へのリスクが低いとされている検査です。一方で、確定的検査は正式に疾患を知ることができますが、検査に痛みを伴う、合併症を起こすなどのリスクを伴います。そのため、すぐに確定的検査を受けるよりも、まずは非確的定検査を受け、その結果次第で確定的検査を進めるほうがベターと言えるでしょう。
【非確定的検査】胎児ドック
妊娠11~13週頃で赤ちゃんの頭殿長(CRL)が45~84mmの時期に受けられる検査です。「胎児ドック」は施設によって呼び方が異なり、「胎児スクリーニング検査」「ベビードック」「胎児初期精密検査」などといわれる場合もあります。
赤ちゃんのNTや血流、心拍数などを詳しく見ていくことで、染色体異常のリスクを調べます。一度の検査でダウン症・エドワーズ症候群・パトウ症候群の可能性を確認できますが、あくまでも可能性を推定するにとどまると覚えておきましょう。
妊娠初期に胎児ドッグを受けた際には厚かったNTが、妊娠中期で薄くなり平均値になることも少なくありません。もし染色体異常の検査を受けて異常がなかった場合は、妊娠中期の胎児ドックで改めて赤ちゃんの状態を確認するのもひとつの方法です。
【非確定検査】母体血清マーカー
妊娠15~18週に受けられる検査で、ママの採血のみで行えます。血液の特定の成分を調べることで、ダウン症・エドワーズ症候群に加えて神経管閉鎖不全症の可能性を確認できます。
ママの血液から赤ちゃんの細胞を採って検査をするため、検査自体の負担は少ないですが、確定結果を知ることはできません。検査結果では、例えば1/500といったような染色体異常の確率がわかるため、その後に確定検査を受けるかどうかの目安として考えておきましょう。
【非確定的検査】コンバインド検査
妊娠11~13週に受けられるもので、エコー検査と母体血清マーカーを組み合わせた検査となっています。ダウン症・エドワーズ症候群、検査機関によってはパトウ症候群を調べることが可能です。
エコー検査でNTを測定し、母体血清マーカーの値も合わせてみることで、赤ちゃんの染色体異常の確率を計算します。組み合わせ検査のためエコー検査や母体血清マーカーの単体検査よりも精度が高くなりますが、こちらも確定結果を知ることはできません。
【非確定的検査】NIPT
妊娠10~15週に受けられる検査で、「Non-invasive prenatal genetic testing(無侵襲的出生前遺伝学的検査)」の略称です。ママの採血のみで検査できる点では母体血清マーカーと同じですが、NIPTではママの血中に含まれる赤ちゃんのDNAをもとに染色体異常の可能性を調べます。
クリニックの検査プランによって検査項目は異なりますが、一般的にダウン症・エドワーズ症候群・パトウ症候群が基本になっているようです。これらに加えて、1~22番の常染色体を調べたり、性染色体や性別を調べたりすることができます。NIPTで調べられる項目は多く、非確定的検査のなかでは最も精度の高い検査といわれています。
【確定的検査】絨毛検査
妊娠10~13週に受けられる検査で、ママのお腹に針を刺して胎児由来の細胞(絨毛)を採って行います。赤ちゃんの染色体を顕微鏡で見るため、ダウン症候群をはじめとする染色体疾患のすべてが検査対象です。ただし、極めて小さな欠失(染色体などの一部が欠けていること)などは検出されないことがあります。
絨毛検査は確実な結果を得られる確定的検査。ただし、お腹に針を刺すことによる破水や出血、早産などのリスクを伴います。また、1/100の割合で流産・死産が生じる可能性があります。
【確定的検査】羊水検査
妊娠15週以降に受けられる検査で、絨毛検査と同じくママのお腹に針を刺して赤ちゃんのまわりを包む羊水を採取します。羊水に含まれる赤ちゃんの皮膚などの細胞を調べることで、染色体異常の可能性がわかります。ほかにも欠失や赤ちゃんの性別なども知ることができますが、検査段階で必要な細胞の培養がうまくいかず結果が出ない場合も。
確定的検査ではありますが、絨毛検査同様に母子にリスクを伴う検査です。破水や出血、早産など絨毛検査と同じ合併症が起こる可能性があります。流産・死産は1/300の割合で生じるといわれています。
NTが気になったら出生前診断を検討しよう
NTの厚みを一度確認すると、ママはその後の妊婦検診も気が気じゃなくなってしまうかもしれません。NTの厚みは薄くなる可能性があるうえ、NT=疾患ありと確定されるものではありません。しかし、「赤ちゃんの状態が気になるので詳しく調べたい」「様子を見ていたけれどNTの厚みが平均を上回ったままだ」といった場合には、出生前診断を検討してみましょう。出生前診断では、妊娠10週から受けられるNIPTが比較的精度も高く、おすすめです。NIPTについて、詳しくは当クリニックまでお気軽にお尋ねください。