不妊治療クリニックの卒業はいつ?転院の流れや一般的なお礼のルールを解説
不妊治療が成功し、妊娠の陽性判定が出ると妊婦健診へ進むのが一般的です。不妊治療を受けている病院などで治療から分娩までできればスムーズですが、多くの場合、産婦人科へ転院する必要があります。では、いつ、どのタイミングで転院するとよいのでしょうか。今回は不妊治療クリニックの卒業時期や、お世話になった先生へのお礼はどうするのかについて解説します。
不妊治療を卒業するのはいつ?
まず不妊治療とは何かをおさらいしつつ、不妊治療の卒業についても説明します。
不妊治療の基本をおさらい
健康的な男女が妊娠を希望しているにもかかわらず、1年間妊娠に至らないことを「不妊」といいます。女性側の不妊の原因には、排卵が起こらない・過去に子宮の手術をしたことがあるなどさまざまです。また、精子の数が少ない、精子の運動能力が低いといった男性側に原因がある場合もあり、その割合は男女ほぼ半々といわれています。
不妊の理由を探り、原因に応じた方法で妊娠をサポートする一連の流れが「不妊治療」です。「2015年社会保障・人口問題基本調査」によると、日本の夫婦全体の約18%が不妊治療を受けたことがあるそう。さらに約2.9組に1組の夫婦が「不妊について心配したことがある」という調査結果が出ており、多くの人が不妊に悩んでいることがわかります。
不妊治療の卒業のタイミングは?
「不妊治療の卒業」とは、ホルモン測定で陽性判定となったのち、超音波検査にて胎嚢(たいのう)と心拍の確認できた人が不妊治療を終了することです。不妊治療を行ったクリニックにて紹介状を書いてもらい、転院手続きを進めます。いつ卒業するかはクリニックによって異なり、心拍の確認ができ次第転院を進めるクリニックもあれば、流産率が下がる妊娠9週以降に転院となるクリニックもあります。
不妊治療から出産までの流れ
不妊治療スタートから出産に至るまでの流れをご紹介します。
不妊治療の4つのステップ
不妊治療にはさまざまな種類があり、簡単なものから始めて、少しずつ高度な治療法へステップアップしていきます。
【タイミング療法】
妊娠確率が高い排卵期に合わせて夫婦関係を持つ方法です。基礎体温や超音波検査などから排卵日を予測し、最も妊娠しやすい日を特定することで妊娠確率を高めます。3~6ヵ月続けても妊娠に至らない場合は、次のステップへ進むのが一般的です。
【人工授精】
タイミング療法で妊娠しない、あるいは性交障害がある場合は人工授精を行います。人工授精は元気な精子を選別し、直接子宮内に注入。人工授精で妊娠する人の約90%が4~6回目までに成功するそう。6回が体外受精を行うかどうかの目安になります。
【体外受精】
タイミング療法や人工授精で妊娠しなかった場合は、補助生殖医療技術(ART)と呼ばれる高度な治療法へステップアップするのが一般的です。体外受精では、採卵した卵子と元気な精子を体の外(シャーレ上)で合わせて、受精を促します。
【顕微授精】
精子が少ない場合や体外受精でも受精に至らない場合は、顕微鏡で確認しながら卵子に直接精子を注入し受精させます。日本において、顕微授精で最初に妊娠・出産に至ったのは1994年。それから急速に件数を増やし、2014年には全出生のうち約4.7%が顕微授精による妊娠出産となっています。
妊娠期(転院から出産まで)
前項で紹介した4種類の方法で受精成功となると、ホルモン測定で妊娠陽性判定となります。着床後、妊娠5週を過ぎるあたりで超音波検査により、胎嚢(赤ちゃんが入った袋)を確認し、さらに1~2週間後に心拍を確認。流産率が下がるとされている妊娠9週目を越えて赤ちゃんが元気であることが認められると、転院を告げられることが多いようです。クリニックの中には、安定期直前の妊娠11週あたりまで見守ってくれるところもあります。
【転院】
通っていた不妊治療クリニックに紹介状を書いてもらい、産科のあるクリニックへ転院します。
【妊娠初期(妊娠発覚~15週まで)】
自治体の窓口に行き母子手帳の交付を受けます。随時妊婦健診がスタートしますが、妊娠初期の間は4週間に1回のペースで受診。個人差はありますが、つわりを感じるのが妊娠11週ごろまでです。早い人で妊娠12週ごろから性別がわかるようになります。
【妊娠中期(妊娠16~27週まで)】
お腹が膨らみはじめ、胎動を感じるようになります。体重が増加し、お腹の張りを感じることも。妊娠24週から妊婦健診が2週間に1回になります。
【妊娠後期(妊娠28週~出産まで)】
お腹が大きくなり、さらに妊婦さんらしい体つきに。妊娠36週から妊婦健診が1週間に1回となります。妊娠37週から正産期となり、いつ生まれても問題ないといえるでしょう。
分娩予約は早めに取ろう
人気の分娩施設によっては、妊娠5~7週目には分娩予約が埋まり、不妊治療クリニック卒業後の妊娠9週目あたりでは予約が取れない場合も。早めに分娩施設を検討しておき、胎嚢や心拍が確認できた時点で分娩予約だけでも取っておくことがポイントです。
クリニック卒業後に流産…治療はいつから始める?
妊娠の陽性判定を受けてクリニックを卒業後、流産をしてしまうことがあります。とくに高齢の方は、いつから不妊治療を再開できるのか気になる方も多いでしょう。ここでは流産について簡単に説明しつつ、いつから不妊治療を再開できるのかについて解説します。
全妊娠の約15%に起こる流産とは
流産の定義は妊娠22週よりも前に赤ちゃんが亡くなってしまうこと。クリニックで妊娠判定を受けたもののうち、約15%は流産になるといわれています。妊娠12週までにほとんどの流産が起こり、その原因は赤ちゃんの染色体異常によるものです。
流産後の不妊治療は生理がきてから
流産後、子宮がもとの状態に戻るには少し時間がかかります。どれくらいの期間をあけて不妊治療をスタートするかは医師の方針によりさまざま。多くの場合、1~2回生理が来てから受診するよう指示があります。
何度も流産を繰り返してしまう方は赤ちゃん以外に原因があることも。原因を明らかにして適切な治療を受けることで妊娠できる可能性もあるので、心配な方は医師に相談してみてくださいね。
クリニックの出産経過報告とは
不妊治療クリニックで治療を受けたのち妊娠出産に至った人には、クリニックからアンケートのような形で出産経過報告をすることがあります。内容は、赤ちゃんの誕生日や分娩様式、合併症の有無など出産の状況や、子供についてです。
不妊治療を行うクリニックは、日本産科婦人科学会へ不妊治療後の経過報告を行う義務があります。日本産科婦人科学会に集められたデータは厚生労働省へと報告され、日本の不妊治療の発展のために使用されるのです。答えた内容について個人を特定されることはなく、プライバシーは守られるので安心してくださいね。
クリニックへの心付けやお礼は必要?
「心付け」とは、今までお世話になった人やお世話になる予定の人に対して渡すお金や品物のことで、日本の文化の1つです。不妊治療は状況によっては長期間に及ぶこともあり、たくさんお世話になった先生やスタッフに、心付けやお菓子などのお礼を渡したくなる方もいるでしょう。
先生との関係性などにもよりますが、心付けを必要としていない医療機関がほとんどです。お金や物がなくても、感謝の気持ちを伝えるだけで十分心に残るもの。先生やクリニックあてにメッセージを送る方も多く、ホームページにてお手紙の紹介を行っているクリニックもあります。
不妊治療卒業のタイミングはクリニックによって異なる
今回は不妊治療クリニックの卒業はいつなのか、お世話になった先生へのお礼は必要なのかなどについてご紹介しました。不妊治療卒業のタイミングはクリニックの方針によってさまざまなので、気になる方はクリニックを選ぶ際に調べてみてくださいね。無事妊娠し、先生やスタッフの方に感謝の気持ちを伝えたいときは、お手紙を書いて渡してみましょう。